日本ってなんて美しいんだろう・・・そう思える時があるのは幸せなこと。凛とした気分でお抹茶をいただく。素晴らしい庭園や自然を眺めながらほっとお茶できる、そんな喜びは江戸時代から脈々と続いて来たものでしょう。そういう気持ちになれる場所はあまり多くないとはいえ、現代だからこそ一般人に開かれている場所も存在しています。ここではいくつかおすすめの御茶屋、茶室をご紹介しようと思います。左の写真は八芳苑の日本庭園。八芳苑にも茶室があります。
あまりに素晴らしいから人に教えたくないような場所・・・旧岩崎邸の和室はまさにそんなところです。旧岩崎邸というと、洋風建築が有名ですが、お金持ちが建てた和風建築といったら一歩足を踏み入れただけで空気が異なるのがわかります。「お金持ちは見えないところにお金をかけるんですよ」とガイドの方が教えてくれましたが、欄間の下など、普通の人が目にしないところに非常なこだわりがあるんだそう。隅々まで徹底したこだわりがあり、かつそれをわざとらしく感じさせないシンプルな和室には、他とは圧倒的に違う品の良さが漂います。そんな中でお茶をいただける嬉しさといったら・・・!庭園らしきものが箱庭だけですが、蒸し暑い東京の夏が嘘のように、心地よい風が吹き抜けています。かつては岩崎さんの関係者しか入れなかった贅沢な空間でほっとお茶が飲める幸せ。東京のど真ん中にこんなに静かで美しい空間がある、それがとても驚きです。上野、意外と面白いですよ!
最寄り駅:
東京メトロ千代田線 湯島駅下車3分、
東京メトロ銀座線 上野広小路駅下車 10分
不忍池の裏
東京で素晴らしい日本庭園と御茶屋を探すのは簡単ではありません。東京、庭園、茶屋、といって一番有名なのは浜離宮の中島の茶屋でしょう。東京の庭園は水が豊かなところが多く、こちらも水辺に面した庭園で、その向こうは東京湾。中島のお茶屋は入ってみると開放的な雰囲気で、外国人も多く、自由な雰囲気が流れています。浜離宮はちょっと行きにくいですが、昔の鴨狩り場などもあり、それなりに楽しめる庭園です。
中央区浜離宮庭園1−1
最寄り駅:新橋駅、汐留駅から徒歩10分くらい 水上バスもあり
東京で一番気に入った御茶屋はここかもしれません。六義園にはいくつか茶屋がありますが、正面入り口からはわりと遠い、大きな池に面した吹上茶屋がおすすめです。初めて訪れた日は正面入り口近くの御茶屋に入り、その後こちらを発見し、しまった・・・と強く後悔したのを覚えています。2回目にこちらに入った際はやはり来てよかった!と頷きました。東京の庭園の良さは京都には珍しい巨大な池では?スケールの大きな池を目の一望しながらお茶ができるというの心地よいもの。東京に居るなら一度は訪れてほしい御茶屋です。
文京区本駒込6-16-3
最寄り駅:JR山手線 メトロ南北線 駒込駅から徒歩7分
入場料:300円
京都での大学院時代、紅葉時にはほとんど研究室におらず、ひたすら自転車で紅葉を巡っていました。そんな私のダントツのおすすめスポットは京大の裏、吉田山にある真如堂。まさにオレンジ色に染まる境内の美しさといったら息をのむしかありません。あんまりに美しいのにそこまで知名度の高くない境内は、平日はゆったりとしています。紅葉時に「甘酒」の魅惑的な看板を出している境内の御茶屋。そこからの眺めといったら!!日本に京都があってよかった。そんな美しい景色を300円程度で大人も子供も楽しめる。それこそが御茶屋の醍醐味です。
住所:京都市左京区浄土寺真如町82
拝観料:500円(境内散策は無料)
最寄り駅:錦林車庫前または真如堂前下車徒歩8分
京都駅からバス約40分
京都大学までバスで行き、吉田神社をぬけ、吉田山を抜けていくのもおすすめ。吉田山には有名な茂庵というカフェも。こちらも時間を忘れられる素敵なカフェです。
京都で一番美しいカフェを挙げるとしたら?と言われたら、私はここ、と言うかもしれません。かつて住んでいた京都の洛西ニュータウンから徒歩30分。伝統的な家屋の立ち並ぶ一画を抜けると大原野神社が現れます。モネの庭園に来たかのような、緑溢れる池のすぐ横でお抹茶やコーヒー、軽食がいただけます。訪れる人も少なめの神社なので、本当にゆっくりと素晴らしい景色に浸っていられます。
最寄り駅:
京都 阪急東向日駅、JR向日町駅より 阪急バス 南春日町行きに乗車 終点南春日町下車徒歩7分
前述の大原野神社の隣に「石の寺」と書かれた世にも美しいお寺があります。京都の西の果て、訪れる人もあまり多くない場所ですが、非常にしっかりと手入れされた美しい石と植物の連なりに驚くことでしょう。ここはまさに極楽浄土。お寺に入り、庭園を眺めると美しい石の先には圧倒的な景色が広がります。こちらの西の果てから、目の前には京都の東、東福寺や宇治の方まで見渡せるのです。京都市内のお寺にありがちな狭く閉ざされた感じとは対照的で、心まで開かれていきそう。美しく磨かれた廊下には「洗心」の文字。まさに心洗われる庭園です。こちらでは庭園を眺めながらゆっくりとお抹茶をいただくことが可能。大原野神社とともにぜひ訪れていただきたいお寺です。境内のふすま絵も見事。
最寄り駅:
阪急東向日駅、JR向日町駅より 阪急バス 南春日町行きに乗車 終点南春日町下車徒歩7分
嵐山も美しいですが、一生に一度は訪れてほしい高雄の紅葉。険しい山間の紅葉の色とりどりの美しさだけでなく、ここにある御茶屋群こそが日本に残したい素晴らしい文化だと思います。高雄のバスや車の駐車場から一旦山を下り、そこから再び神護寺に向けて歩き出すと2〜3軒の茶屋が観光客を迎えます。まさに山中にある御茶屋では、鍋焼きうどんなど、あたたかい食事も楽しめます。ほろりほろりと散る紅葉。目の前いっぱいに広がる美しい色の変化を眺めながらあたたかいものを食べる喜び。まるで浮世絵の中のような景色の中に自分が居られる。日本に美しいものってちゃんと残ってたんだなあ・・・と喜びに浸っていられます。わざわざバスに乗っていく価値のある紅葉と御茶屋です。
京都駅からJRバスで約50分
圓徳院は京都の東山、高台寺の向かいに位置する、秀吉の妻ねねの終焉の地。圓徳院のお庭は息を飲むほどの見事さで、京都の中心地の中でもかなり好きなお寺。京都に7年程暮らし、お寺でお抹茶も飲んできましたが、どこが素晴らしかったかというとこちらの小間の茶席が特に記憶に残っています。ふらっと立ち寄った一般人が京都でお抹茶といえばお庭を見ながらちょっと一杯というのが普通。けれどもこちらは薄暗いお茶室に招いてもらえるのです。華やかな庭園とは対照的に、光も少なく狭いお茶室で、ねねの道の雑踏を忘れ、静寂に包まれる・・・これがお茶の世界だったんだ・・・というのを体感できる、京都でも貴重な空間です。
京都、東山の建仁寺と高台寺、八坂神社の中間あたりです。このあたりは石塀小路、二年坂、産寧坂もあり、散歩にもってこいのコースです。
住所:京都市東山区下河原町530
拝観料:500円 10時〜17時
小間の茶席は前日16時までに予約 1500円
静岡県、牧ノ原にあるお茶の総合博物館、お茶の郷はわざわざ訪れる価値のある博物館。日本のお茶だけでなく、中国はじめ世界の喫茶文化をわかりやすく伝えてくれる、お茶好き必見の博物館。こちらの価値を倍増するのが併設されている、再現された小堀遠州の庭園と、お庭に面した茶室です。茶室のある数寄屋造りの建物がとても凝っていて、桂離宮を思わせます。こんな空間でお茶がいただける、というのは本当にありがたいこと。混んでいなければお点前もしていただけるそう。庭園内には水上に建てられた茅葺きの、風を感じるためにつくられたぜいたくな建物が。数寄屋というだけあり、なんとも面白いつくりの庭園です。
最寄り駅:
JR金谷駅からタクシーで5分
徒歩はあまりに大変なのでおすすめしません(山道上り30分)
紅葉山庭園は静岡市内の駿府城公園内にある日本庭園。富士山に見立てた築山もあるこの庭園は小さいながらも景色が変化に富んで見応えがあり、わざわざ訪れる価値あり。庭園奥には立礼席でお茶を楽しめるお茶席が。わりとのんびりしているのでゆっくり時間を過ごせます。静岡のお煎茶や玉露、お抹茶がお菓子とともに味わえます。静岡のお茶スポットは色々と巡りましたが、1つだけ挙げるとするならここかもしれません。日陰になっている東屋もつい長居してしまいます。
最寄り駅:JR静岡駅から徒歩15分 静鉄新静岡駅から徒歩10分
駿府城公園内
日本最大のお茶の産地、静岡にてお茶について学べる貴重な空間。足を踏み入れると膨大な茶関係のの蔵書に驚きを隠せません。こちらでは静岡茶の美味しい入れ方を日本茶インストラクターの方が指導してくれ、1煎目から3煎目まで、温度や茶葉の開き具合による味わいの変化を楽しめます(無料)。また静岡茶に関するパンフレットや資料も充実しており、静岡茶を深めたい人には格好の場所だと思います。(ただし開館は平日の9時半〜16時半のみ、土日やっていないのが残念!)
最寄り駅:JR静岡駅 徒歩2分
静岡市駿河区南町14−1 水の森ビル 3階