イタリアにはカフェとバールという言葉があり、コーヒーを飲みに行く店はバールと呼ばれています。バールではパンやサンドイッチ、デザートの並んだショーケースのあるカウンターで立ち飲みするのが一般的。イタリア人にとって質の良いコーヒーとバールは非常に重要で、彼らはレストランでは食後のコーヒーを注文しないようです。というのもレストランだとあまり美味しくない上に値段も高いから。それよりは店を変えてこだわりあるバールで立ち飲みするのがいいんだそう。イタリアの数々の広場に並ぶオープンカフェは、よく見るとレストランであることが多いですが、飲み物だけの注文も可能。朝食から夕飯前のアペリティーボ、深夜のカクテルまで楽しめます。ここでは歴史的なカフェをご紹介します。
サン・マルコ広場の中には生演奏を行っている3軒の歴史的カフェがあり、その中でも一番感じが良くておすすめなのがこちらのお店。どこも値段は非常に高く、1人18ユーロ程度かかるとはいえ、こちらは生演奏の質も良く、テラスから見えるサンマルコ寺院が夕暮れ時に光輝く姿が思わずため息が漏れる美しさ。店員さんも3軒の中では一番感じが良く、ちょっとでも振り向くとすぐ対応してくれる。ラヴェーナは1750年にオープンし、1860年にカルロ・ラヴェーナ氏が買いとって現在の名前に。その頃から生演奏を売りにした優雅なカフェだったといいます。1882年から1年ほど、ワーグナーがこの店を愛し、夕方になると毎日紅茶やコニャックを飲んでいたそうです。
世界一値段が高いといえるサンマルコ広場のカフェのテラスに座り、メニューをしばらく眺めた後で席を立つ客は何人も。店員さんたちは「いつものことだ」という目で彼らを諦めたように眺めています。しかしこんなにも高級なのには実は理由があるのです。店員さんによれば、サン・マルコ広場のカフェは、昔からテラスに日除けのひさしを出すことと、フォークとナイフを使って食べる食事の提供をすることが許されていないのだそう。イタリアの通常のカフェテラスではどこも大きなひさしがあり、ラザニアやピザを出して儲けていますが、ここではそれが許されません。悲しいかな、観光客で大にぎわいのサン・マルコ広場の真夏の昼のテラスには、直射日光がきつすぎて誰も座らないのです。ここが賑わうのはいつも夕方になってから。そしてエイっと20ユーロ払ってみると、(特にお酒の場合)おつまみの量が半端なく、追加料金をとられることもありません。もう夕飯はいらないというほどお腹いっぱいになり、生演奏を楽しみながら美しいサン・マルコ広場をゆっくりと眺めていられるます。世界に唯一な場所でこの幸せな時間を買えるのであれば20ユーロは高くないのでは?せっかくだから一度はサン・マルコ広場のカフェテラスに座ってみたいという方には夕暮れ時のラヴェーナのテラスがおすすめです。
Piazza San Marco, 133-134 30124 Venezia
ローマの老舗カフェ、サンテ・ウスタキオは、1938年にコーヒー豆の焙煎所として創業した、ローマの地元の人たちの行きつけの店。信じられないほど分厚いクレマとすでに砂糖の入っためちゃくちゃ旨いエスプレッソ。ただこの店に行くためだけに飛行機に乗りたいくらい最高に美味しいエスプレッソが味わえます。フェアトレードの豆と有機栽培のアラビカ種の豆だけを使用。ここで販売しているコーヒー飴の缶には「人生はまずいコーヒーを飲むには短すぎる」との一言。まさにその通りだけれど、本当に美味しいコーヒー屋に出会うのは運命の恋人に巡りあうくらい難しい。こんな店が近くにあるなんて、ローマの人たちが本当に羨ましい。ローマのパンテオン付近。
Sant'Eustachio Il Caffè, Piazza Sant'Eustachio n82 00186 Roma