パリのカフェ、と言われてまず思い浮かぶイメージといえば、通りに面したテラスでしょう。パリのカフェでは基本的にはどんなに小さなカフェでも、2、3個の椅子が通りに面して出されています。東京よりもよっぽど寒く、太陽の光にありがたみを感じるパリでは、ちょっとでも天気がよくなるとテラス に人が溢れます。
通りに面してテラスが何列も張り出されているカフェの開放感はやはり格別なもの。人間観察をしたり、パリに来た喜びをかみしめたり、次の計画をたててみたり。カフェのテラスなんてあって当然!と思っていたフランス人たちも、コロナのロックダウンによってテラスのありがたみを痛感したようです。カフェのテラスって本当に気持ちがよく、自由な気持ちになれるんですよ。
パリのカフェで"Un café s'il vous plaît." (アンカフェ シルヴプレ=コーヒーを1つお願いします)というと、エスプレッソが出てきます。伝統的なカフェには、日本でいう「ホットコーヒー」はありません。一番基本的な「カフェ」はエスプレッソで、店内では約2ユーロ。カウンターで立ち飲みすると大抵1ユーロでエスプレッソが楽しめます。フランスではエスプレッソにたっぷりと砂糖を入れて、甘苦い味を楽しみます。最近新しくオープンした、豆にこだわる店では、「フィルターコーヒー」という名で、マグカップに入ったコーヒーが飲めるようになってきました。
エスプレッソはちょっと濃い・・・という方には、"Café crème"がオススメです。パリで飲むカフェ・クレームの美味しさといったら!カフェ・クレームはカフェ・オ・レのようなものですが、エスプレッソに泡立てたミルクをのせています。カプチーノほどの泡ではないので、イタリアでいうカフェ・ラテのようなものでしょうか。私はこのほどよい泡加減が大好きです。こちらはだいたい4ユーロ程度です。
パリでカフェ巡りがしたいけれどもカフェインも苦手だし予算も限られている方には、カフェイン抜きのエスプレッソ、「デカフェ」がオススメ。かなり多くの店にこのデカフェのエスプレッソはあるので、メニューに載っていなくても聞いてみるとあるかもしれません。・
パリのカフェのもうひとつの大きな特徴、それはカウンター。パリのカフェはシャンデリアや大きな鏡があるブルジョワの、社交場としての要素が強い場所でした。それに対して、19世紀後半から、フランスのオーベルニュ地方出身者たちがパリに出稼ぎに来た際に、炭を売り、かつその場でワインなどを一杯飲める小さな店を出し、労働者や庶民に愛されるように。こうしてカウンター形式の庶民的で手軽なビストロが増えていき、今ではパリの多くのカフェにカウンターとテラスの両方が存在します。フランス人がビストロ、という言葉を使う時、そこは美食の店というよりも、食を囲んでワイワイと楽しい時間を過ごす場所という認識があります。お酒片手に隣の人ともつい語ってしまう、そんな場所がパリのビストロの真髄なのです。(カフェとビストロはほぼ同意語ですが、ビストロは料理がメインで通しで営業していないこともあります)
カフェのカウンターに来るお客さんはほとんどが馴染みの人たちなので、注文を言わなくてもスッと「いつもの」飲み物が出されます。主人と客達には微妙な境界線があるようで、親しすぎず、突っ込みすぎず、けれどもお客さんの話に耳は貸している、といった感じです。
パリのカフェらしさを形作るものとして、テラスを彩る籐製の椅子が挙げられます。籐の椅子は頑丈で持ち運びやすく、かつお洒落なため、テラスにはもってこい。店じまいするときには椅子を4つ程上に重ねることもあり、その姿は圧巻です。テラスで籐の椅子とペアになるのが大理石の丸テーブル。
ただ椅子もテーブルも最近は味気ない店が増え、籐風のプラスチックを編んだ椅子や、ガラス張りの丸テーブルも目立ちます。パリのカフェのテラスというのは公園のベンチに近い感覚です。疲れたし、あそこに椅子あるから座ろっか。でもなかなか店員さんがこないから他の店に行こうか、と立ち上がることも。わざわざカフェに行くというより、自分が疲れた時にそこに椅子があるからちょっと寄る、そんな気持で使われている、かなり気楽なものなのです。
典型的なパリのカフェやビストロの店内には、ウィーンから来たトーネットとよばれるタイプの木製の椅子や、壁際には合皮を貼ったソファー席があり、その上には大きな鏡が貼られています。鏡は店内を広くみせる効果があり、鏡やシャンデリアの使用を始めたのはパリで初めて成功したカフェ、プロコープの主人。それまでオリエント風を目指しては失敗したカフェという場をフランス風のスタイルをつくって普及させたのは彼なのです。
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